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Category: 昭和の語彙

昭和の語彙(3) 瞬間湯沸かし器

## 単になくなったわけではない

今「瞬間湯沸かし器」というのはほとんどなくなりました。
自動給湯器になったからです。

とはいっても少し懐しくはあります。自動給湯器ではお湯が出るまでに
少し時間がかかりますが、瞬間湯沸かし器ではすぐにお湯が出たからです。

ただ瞬間湯沸かし器はあくまでも洗い物など少量の水を沸かすのに
適しているだけです。シャワーにはちょっと水量が足りないし、
これでお風呂にお湯を張るのは効率が悪いです。そこは自動給湯器の
ほうがいいでしょう。

単に機械がなくなったから当然その言葉が使われなくなった
のですが、昭和では「瞬間湯沸かし器」という言葉にもう一つの
意味がありました。そしてやっとその意味での使われ方も
消えようとしています。

## もう一つの意味とは

ご存知の方も多いかと思いますが、「瞬間湯沸かし器」とは「すぐに
カッとなって怒る人」のことを指しました。瞬間湯沸かし器は
水をすぐにお湯にするからです。

> 「部長に怒られたよ」「部長は瞬間湯沸かし器だからね」

のように使われました。この用法は若い人には通じないでしょう。
瞬間湯沸かし器自体を知らないのですから。勘のいい子なら「瞬間」という
言葉にピンと来て相槌を打ってくれるかもしれませんが。

## もうそろそろ

もうそろそろ「瞬間湯沸かし器」という言葉で「すぐ怒る人」を
指す用法はなくなっているでしょう。

故山本矩一郎先生は著書の中で「瞬間部分積分法」を解説していました。
この「瞬間」というのが「瞬間湯沸かし器」から来ているもので、
現在では「自動給湯器」のことです、と付記していました。
いかにも山本先生らしいと思います。ちなみに1989年ごろの話です。

## 何でも死語と分類するのは簡単ですが

使われなくなった言葉を「死語」と言ってしまうのは簡単ですが、
意外にも生きのびているものにも気付かなければなりません。

たとえば「ポンチ絵」。これは「概念図」のことだと思います。
仕事で文書を作成したところに

> ここにポンチ絵を入れて下さい。

と言われたことが何度もあります。明治か! と思いますが。

また「バタンキュー」も、モーニング娘。’14のセンター
[鞘師里保(16)のブログ](http://ameblo.jp/morningmusume-9ki/entry-11920714220.html)に出現していることも確認されて
います。私(43)だって使わないのに。

つまり「ポンチ絵」も「バタンキュー」もまだ昭和の語彙では
ないのです。不思議ですね。

昭和の語彙(2) せんべい屋

私が生まれ育った戸塚(横浜市)というところは東海道
五十三次に出てくる宿場町です。知名度もなく、
田舎ではあるのですが、近年箱根駅伝の中継所として
知られるようになりました。

戸塚は古くからの商店が多く、いろいろな個人商店がありました。
もちろん銭湯はあるし、質屋もある、果物屋もありました。
その中に「せんべい屋」がありました。

せんべい屋というのはもちろん「せんべい」を売っている
お店なのですが、そこのせんべい屋のせんべいはおいしかったです。
品川(海苔を巻いたあられ)や名前はわからないけど、
ごまの入ったあられが私の好みでした。

どうしておいしいかというと、「水分が少なく、軟らかくない」からです。
今は亀田製菓や三幸製菓の寡占状態となっているせんべい、
あれはあれで悪くはないのですが、どうも水っぽい。ふやけた感じです。
やっぱりせんべい屋のせんべいに勝るものではありません。

近頃せんべい屋を見ないので、天神橋筋六丁目商店街に行ったときに
調べてみました。半分ほど歩いたのですが、せんべい屋が見つから
ない。お茶屋はあるんですけどね。

ということで「せんべい屋」というのは昭和の語彙になって
しまったようです。

昭和の語彙(1) おぶ

5歳以下の時、昭和40年代末期ですね。
私が主に飲んでいたのは「おぶ」でした。

早い話が「湯ざまし」です。

お茶も紅茶もコーヒーもカフェインが入っているので、
飲ませてもらえなかったのです。

これは特別なことではなく、昭和の日本人は
生水を飲まない習慣があったのでした。
(ちょっと言い過ぎですが)

私は小学校の高学年になって緑茶を飲ませてもらえる
ようになりました。4年生の時に歯医者に行ったら、
歯科助手のお姉さんから「お茶好きでしょ。歯にお茶っ葉が付いてる」と言われ、恥ずかしい思いをしました。

お茶も最初はほうじ茶から始めて、その次に緑茶でした。

今でも茶葉を買って緑茶を飲みたいのですが、
おいしいと思えるのは、100g 1,000円以上の
ものなので、お金の問題からコーヒーを飲んでいます。コーヒーは100g 100円以下の粉があり、それでもそこそこ飲めますからね。

ミネラルウォーターが流行って、日本人は
生水を飲むようになりました。水道水も
そのまま飲めるようになりました。

従って「おぶ」という言葉は廃れ、昭和の語彙になりました。

今の子供はジュースを主に飲んでいるようです。
学校には麦茶を持って行きますが。

甥姪はジュースばかり飲み、「水道水は飲めない」と言います。
お茶もコーヒーも飲みませんが、
これでいいのかと思うことしきりです。

昭和の語彙(0)

1970年以降生まれは「欠乏のない世代」である、ということを
最初書こうと思っていました。

## 欠乏のない世代

つまり今あるものは既にあった世代である、ということです。

かっぱえびせんはあったし、サランラップもあった。
100円ライターもあったし、テレビはカラーだし、テレビ番組も
大体あった。電話も各家庭にあったし、宅急便の誕生も目にした。
道路は大抵舗装されていたし、自家用車を保有している家も
多かった。銀行のATMだってあったし、ゴミは自分で燃やすことは
禁じられて、現在のように回収されるようになった。まあ、現在の
ように分別することはありませんでしたが。

なかったものはインターネットくらいのものです。携帯電話は
ありませんでしたが、自動車電話はありました。

## 実はなくなったものも多い

と思っていたのですが、なくなったものも多いということにも
気が付きました。

この「昭和の語彙」ではそういう事物や言い回しについて書いて
いきたいと思います。

ちなみにこの「昭和の語彙」というのは山本夏彦の「明治の語彙」を
意識していますが、内容は全く別物になることでしょう。

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