最近になって派遣の仕事をしてみて、いろいろ考えるところが
あったので、ぼちぼち書いてみたいと思います。

## 社会の変化

### 非正規雇用が増えると

今後、派遣労働者のような非正規雇用が増えそうであり、
政府もそれを後押しするような政策を実施しようとしている。

これをよくないとする声が多い。

確かに非正規雇用ではまずローンが組めないと思う。
組めても35年ローンなんて無理すぎる。したがって

* 住宅販売戸数の下落
* 自動車販売台数の下落

などという傾向が出てくる。

非正規雇用者は一生賃貸住宅での暮らしを余儀なくされて、
自動車も買えず、結婚もできないということになる。

住宅も車も売れないとなれば、日本の将来は暗い。

一握りの正社員や公務員が蓄財して、マンションや
アパートの大家となり、非正規雇用の人はそこに住み、
格差はどんどん開いていく。

非正規雇用の人は借金もできず、困窮したときには、
生活保護に頼るしかなくなる可能性がある。

年金や国民皆保険も崩壊する。そして日本は没落する。

そういう将来がないわけではない。

### 明るい未来もありうる

しかし、暗いシナリオに基いて、非正規雇用の将来は暗い、
日本の将来も暗い、と決まったわけではない。私は明るい未来も
ありうると考えている。

根拠は、「日本社会が資本主義で民主主義で法治国家である」から
である。あるいは「個人の自由が保証されている」と言ってもいい。

### 住宅ローンを例にとると

たとえば、非正規雇用の人が住宅ローンを組めない、という
問題がある。これは前述したように悲観的な話である。しかし、
銀行にとっても住宅ローンを組んでくれない人が増えるという
ことでもある。しかもそのような非正規雇用の人がどんどん
増えるということである。

銀行としては収入源がなくなっていくわけである。銀行はどうするか。
一つは住宅ローンを取り扱わない。もう一つは非正規雇用向けの
住宅ローン商品を開発する。私は後者の可能性が高いと思う。
もし開発しなければ外資が参入して取り扱うのではないか。
それよりは自分たちで商品を開発するほうが建設的である。

消費者金融は既に非正規雇用でもお金を貸している。
実際のところ住宅ローンを返せなくなったら個人再生させるとか、
抵当権を行使すればいいのではないかと思う。たぶん銀行が
面倒くさがって非正規雇用向けの商品開発をやらないだけだと思う。

今のは単なる例であって、私は銀行や金融に詳しくないから
想像でしかない。

言いたいことは「非正規雇用が多数派になったら、非正規雇用向けの
商品を開発しないと、会社は市場を失うおそれがある」ということ
である。これは消費者に直接向き合う会社はわかっていると思う。
でもその会社に商品や部品や素材を納入している会社はわかっているか
どうか。逆に非正規雇用に受ける商品を開発できる会社には商機がある。

### 非正規雇用が多数派になることのインパクト

ポイントは多数派、というところである。

資本主義では会社は利益を出し続けないと存続できない。
大雑把に言うと売り上げを上げて、キャッシュフローを維持できないと
倒産するしかない。

今後は消費者の性向が変わるのである。非正規雇用の生活スタイルを
知らないと非正規雇用が買う商品がわからない。

その非正規雇用が少数なら無視してもよいが、多数派になる
のである。市場に変化が起きる。もっと言うと産業構造に影響を
与えるほどの変化が起きる。

その多数派にアプローチできない会社はシェアを失うことになる。
シェアを失い、売り上げを失うか、それとも多数派向けの商品を
開発するか。

非正規雇用が多数派になれば、社会が無視できない、市場を変えるほどの
影響力を持つ。それが日本社会が資本主義であることからの帰結である。

### 同様のことが政治にも言える

日本では選挙権は一人一票である。正規雇用でも非正規雇用でも。
そして多数の票を得た人が議員となる。非正規雇用が多数派の
社会となれば、非正規雇用向けの公約を掲げた人に票は集まる。

もちろんこれは極論である。非正規雇用とは言え、大企業で働く
人もいれば、区役所で働く人もいる。大企業軽視、行政削減の
政策に反対する非正規雇用の人もいるだろう。
そもそも投票の動機は雇用の問題だけではない。

しかしながら雇用の問題は意外と根深い。世界には1/4が公務員という
国があるという。そこでの選挙はどうしても公務員向けの、政府の
意向が反映した選挙結果になるという。確かに公務員の数を減らそう
という候補者に1/4もの公務員は投票するだろうか。その議員が当選したら
職を失なうのは自分かもしれないのである。

同様に非正規雇用が多数派になれば非正規雇用の権利を制限しようと
する候補者より、非正規雇用の権利を拡大しようとする候補者に
票が集まる傾向が見られるようになると思われる。

「誰に投票しても同じ」というのは自分の生活がおびやかされる
心配がない人が言うことである。自分の生活が簡単におびやかされる
可能性のある非正規雇用は、より自分の生活がおびやかされない
候補者を選択するであろう。

これは日本社会が民主主義、権利能力平等からの帰結である。
多数派の動向が国を動かすのである。
独裁者が非民主的なやり方で多数派の動向を圧殺することはできないのである。

### そして日本は法治国家である

日本は法治国家であり、その法律は国会でしか作れない。
国会議員は非正規雇用という多数派の支持を得たわけであるから、
非正規雇用の権利を拡大することはあっても、制限することには
賛成しにくい。次の選挙で落選する可能性が高まるからである。

また事後的ではあるが、社会に影響を与える問題に対しては
立法して、社会への影響を抑えることが多い。非正規雇用が
多数派となる社会では、非正規雇用により生ずる問題については
非正規雇用への影響を小さくする法律、優遇する法律ができるで
あろう。時間はかかるが法整備により非正規雇用の権利が
守られてゆくだろう。

また裁判所の判決も非正規雇用に有利なものに変化する可能性がある。
社会に変化が起きる。裁判所も微妙に空気を読むのである。
使用者と非正規雇用者では非正規雇用者に有利な判決が出る
可能性も高まる。

日本が法治国家であるがゆえに、非正規雇用が多数派となった場合、
権利が守られることになる。

## まとめ

以上、非正規雇用が増えたところで、非正規雇用者の未来が
必ずしも暗いわけではないと思っている。

しかし、かなり強引な論理展開であることは否めない。
たとえば非正規雇用者が全員正規雇用を望んでいる場合、
以上の論理展開は破綻する。非正規雇用が多数派にならない
からである。

あくまでも「非正規雇用が多数派になったら社会にどれだけの
インパクトが考えられるか」という視点でのみの考察である。
そして日本は多数派の主張が認められやすい社会である。

ただ本当に重要なのは日本がどうなるかではなく、非正規雇用者が
どう生きていくかということである。自分は実力があるから、
どんな環境でも働ける、とか、日本が不景気だから海外で
働こう、というような気概を持って、非正規雇用という待遇を
満喫することが大事なことのように思われる。